【「多様な教育機会確保法案」をめぐる動きについて】 (転載歓迎)

超党派フリースクール等議員連盟と夜間中学等義務教育拡充議員連盟が
標記法案を提出することについて、5月28日に報道各社が報じています。

毎日新聞がフリースクール関係者の声として奥地圭子さんと
札幌自由が丘学・杉野学園長、函館アカシヤ会・野村俊幸氏のコメントを掲載しています。。

懸念事項も多々ありますが、「お上が決めた学校」しか子どもが行くことができず、
そのことで子どもが自ら命を絶ったり、
家庭が崩壊するといった理不尽な現状を変える第一歩にしたいものです。

【フリースクールを容認 不登校児の義務教育 法案提出へ】

2015年5月28日毎日新聞第1面
超党派の議員連盟は27日
保護者が作成した学習計画を市町村教委が審査・認定することを条件に、
不登校の小中学生が通うフリースクールや家庭での学習を義務教育として
認める法案を今国会に提出する方針を決めた。

法案は国にフリースクールでの学びに対する財政面の支援も求めている。
法案が成立すれば、義務教育の場を小中学校に限定してきた戦後教育の大転換になる。

自民党内には慎重論もあり曲折も予想されるが
議連は今国会での成立と、2017年度の制度化を目指す。
(社会面に関連記事)

法案は「多様な教育機会確保法(仮称)案」。夜間中学の拡充など、
義務教育を受けられなかった人たちへの学習支援を
自治体に義務付けることも盛り込む。

小中学校以外で学ぶことが必要な人たちが増えているため
「多様な学びの機会を確保し国と自治体が支援する」
(立法チーム座長の馳浩衆院議員)のが狙いだ。

 13年度の不登校小中学生は約12万人と6年ぶりに増加した。
一方、フリースクールは全国に約400あり
約2000人が学んでいるとみられている。

NPO法人などが運営しているが、法律上の位置づけや公的支援はない。
 保護者には学齢期(6~15歳)の子どもを小中学校に

通わせる義務があるが、不登校の小中学生は13年度に
約12万人に達し、6年ぶりに増加した。

一方、NPO法人などが運営するフリースクールの多くは
ほとんど通学していなくても校長の裁量でそのまま卒業しているのが実態だ。

 法案は、保護者がフリースクールや自宅で何をどう学ぶかを
「個別学習計画」にまとめ、これを市町村教委が認定すれば、
子どもを就学させる義務を履行したとみなす。

修了すれば小中学校卒業と同程度と認める仕組みを
想定している。フリースクールの授業料は月額数万円かかり

経済的理由であきらめる親子も少なくないため、
法案は国や自治体に必要な財政措置を求めた。

 法案には、戦中・戦後の混乱で義務教育を受けられなかった高齢者らが学ぶ
「夜間中学」への支援も盛り込む。

入学希望者がいれば、公立の夜間中学の設置など
必要な措置を講じるよう都道府県教委や市町村教委に
義務付けるとしている。【三木陽介、高木香奈】

【不登校対策 転換に期待 「学校外で義務教育」法案】

 5月28日毎日新聞社会面(第25面)

<フリースクール尊重 注文も>

 「不登校の子どもたちが通うフリースクールを義務教育として認めよう」。
超党派の議員連盟がまとめた法案が今国会に提出される見通しになった。

もっぱら学校に復帰することを求めてきた従来の
国の対応からの大きな転換となる。

「多様な学びが認められる」と歓迎する声が上がったが
スクールごとの独自性や子どもに合った教育メニューを尊重
してほしいという注文も聞かれた。【佐々木洋、三木陽介、高木香奈】

 東京都と千葉県内の3カ所でフリースクールを
運営するNPO法人「東京シューレ」理事長の奥地圭子さん(74)はこの日
国会近くで開かれた議員連盟の総会に招かれた。

法案の説明を聞き「学校以外での学びを
ようやく正規に認めてもらえる」と笑みを浮かべた。

 長男がいじめで不登校になったことをきっかけに
フリースクールをつくり、今年で30年。
これまで1300人以上の子どもの巣立ちを支援してきた。

「学校に通えない弱い子だという社会の目があり
フリースクールの子たちは引け目を感じざるを得なかった。
(法制化を機に)社会の誤解や偏見がなくなれば」と期待する。

 今後の検討課題となっている家庭への
経済的支援も欠かせないと指摘する。

公立の小中学校は授業料がかからないが、
フリースクールは維持費などで毎月2万5000~4万5000円程度の
月謝が必要で、家庭の負担は軽くない。

「憲法はすべての子どもの学ぶ権利を保障している。
学校以外で学ぶ子が不利益を受けない仕組みを整えて」と訴える。

教育委員会が認定するとしている「個別学習計画」については
学校のカリキュラムを前提に作ると、さまざまな事情を
抱える子どもに対応できないとし「ひとりひとりに寄り添った支援を求めたい」と注文した。

 「登校拒否と教育を考える函館アカシヤ会」(北海道函館市)代表で
社会福祉士の野村俊幸さん(65)は「学校に戻すことを前提とした
不登校対策の転換につながると期待したい」と話した。

<札幌の学園長「経済的支援も」>

 不登校の中学生が通うフリースクール「札幌自由が丘学園」(札幌市東区)の
杉野建史学園長(45)は「法案が、ここに通う子に胸を張って学ぶ
第一歩になることを期待したい」と評価する。

 フリースクールは現在の教育では位置づけが不透明で
保護者らが周囲の理解を得にくいという。

学校に復帰できない児童生徒の学習権を保障するためにも
制度に位置づけられることに期待を寄せる。

 同学園は札幌市の独自制度で年間200万円の助成を受けているが
経営は苦しく授業料や教材費で月3万5000円かかる。

杉野学園長は「保護者から問い合わせがあっても
授業料を言うとそれきりになってしまう。経済的支援もお願いしたい」と注文をつけた。
【千々部一好】

<解説:学習計画、授業料など課題>

 フリースクールは既存の学校になじめない子どもたちが学ぶ場だ。

議員立法での成立を目指す法案は長年、義務教育制度の外に
置かれていた「学び舎(や)」を国が正式に認め、支援する内容で、
実現すれば画期的な方針転換になる。

ただ、実現には課題も多い。保護者が作る「個別学習計画」を
市町村教委がどのような基準や手続きで認定するのか。
学習計画の作成や履行にどこまで市町村教委や学校が関与するのか。

義務教育は無償だが、フリースクールに通う子どもたちの
授業料を国がどこまで負担するのか。

今後、文部科学省が具体的な制度設計を進めるが
いずれにしても一定の基準が必要になる。

 しかし、フリースクールはその名が示す通り
個々の子どものペースで安心して自由に学べる場だからこそ受け皿になってきた。

基準がフリースクールのこうした特性を奪ってしまう
可能性もあるため、制度設計には慎重な手続きが必要だ。【三木陽介】